ラッキー教授は、長年の研究から「最も理想的な環境は自然放射線の100倍である」と言っています。ホルミシスの分野では便宜的に自然放射線を1ミリシーベルト/年としますから、理想の環境はその100倍、すなわち100ミリシーベルト/年ということになります。
この数字を時間あたりの線量率に換算すると、274マイクロシーベルト/日、1時間あたりでは11.4マイクロシーベルト/時となり、この線量で四六時中刺激を受けるのが理想ということになります。つまり一日中寝たきりでホルミシス治療を受け続けるとして、理想の線量率は11.4マイクロシーベルト/時となるのです。ただこの計算は、末期がんの患者がホルミシスマット上で寝たきりの状態で治療を受けるといった特殊なケースに限られます。現実には四六時中ホルミシス治療を受け続けることは少ないと思われるので、通常のケースでは短時間にもっと高い線量率を照射することが必要だと思います。
例えばホルミシスルームで毎日(1日おき)1時間治療するということになれば、274(548)マイクロシーベルト/時の線量率になります。ホルミシスマットに8(12)時間寝たきりの治療のケースでは34.3(22.8)マイクロシーベルト/時の線量率が理想となるわけです。
ある動物実験では、5~50センチグレイの照射が有効線量域とされています。この数字から計算すると、X線やγ線を照射した場合は、そのまま、5~50センチシーベルト=50~500ミリシーベルトが有効なしきい値ということになります。
以上の事実からみて、「ホルミシス=刺激する」という意味で放射線を治療として用いるなら、10マイクロシーベルト/時あたりを下限とすべきだと考えます。この下限の線量を基準に毎日1時間ずつホルミシスルームに入ったとしても、年間の被曝線量は3.65ミリシーベルト/年にすぎず、CTスキャン1回の被曝にも満たないので、きわめて低容量の被曝であるということができると思います。
一方、治療の上限のしきい値としては、これまで確認された安全値の上限が100シーベルト/年ということから換算すれば、1時間あたり11000マイクロシーベルト/時を超えなければ健康被害は生じません。しかし、われわれはさらに万全を期して100マイクロシーベルト/時を上限とすべきだと考えます。
【ラドン濃度】
一方、この線量域の基準(10~100マイクロシーベルト/時)からラドン線量換算変数を使って計算すると、ラドン濃度は屋内:2500~25000ベクレル/㎥、屋外:1250~12500ベクレル/㎥あたりが基準となります。
国際放射線防護委員会(ICRP)は、ラドンに関する放射線防護の基本的な考え方や対策基準を示していますが、それによると、屋内ラドン濃度の対策基準(何らかの措置を施す必要のあるラドン濃度)として、200ベクレル/㎥~600ベクレル/㎥(年実効線量として3~10ミリシーベルトに相当)の範囲を勧告しています。
しかし、三朝温泉のラドン濃度は約2000ベクレル/㎥であり、「ホルミシス=刺激する」という意味で、治療として用いるにはせめて三朝温泉の半分程度の濃度は必要と考え、屋内ラドン濃度は1000ベクレル/㎥を下限としたいと考えています。
川嶋朗(ホルミシス臨床研究会代表理事)